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TTT『戸惑いの惑星』を観てきた感想

TWENTIETH TRIANGLE TOUR『戸惑いの惑星』観てきました。めちゃめちゃ上質で本当にウェルメイドな舞台でした。「よくできた舞台」って書くと何だか偉そうになっちゃうんだけど、ウェルメイドって書くと何だか角が立たない。というわけで、ネタバレというか観た人じゃないと何言ってるんだかわからないだろうなというとりとめのない感想をまとめました。タイトルが身も蓋もありません。

 

本人と役とが混ざり合う構造

舞台では始まる際にトニセンの3人が出てきて、しゃべっている間に現実が揺らぎ、実は3人は三池(坂本)・由利(長野)・長谷川(井ノ原)という同郷の人たちであるという導入。最初はトニセンとしてしゃべっているのに、このトークの内容がストーリーに絡んだりしてきて、現実と物語の境目が曖昧になる感覚が心地よいです。しかし、長野さんはフリートークの時も結構演技してます!って感じで結構力が入っていてしょうがないかわいい。逆に井ノ原さんは普段通りの井ノ原快彦すぎて怖いです。嘘つくのうまそう。

3人は三池・由利・長谷川を演じながら、実は本人達のエピソードも存分に入っているといいます。正直私はどれが本人のエピソードなのかよくわからなくて*1、でも3人はかなり深く本人達とオーバーラップしているように思いました。

本人像をだぶらせる舞台といえば、現在のジャニーさん舞台が思い浮かび、そう言った作品では役者本人達の名前が役名に使われるのが基本です。トニセンが出演していた少年隊のPLAYZONEでも、ジャニーさん作のMASKやSHOCK、あるいはRHYTHMⅡなどがあり、これらは本人が本人として演じる、また客席がある程度本人像をダブらせて観ている前提にある作品といえます。『戸惑いの惑星』は、そういったジャニーさん作品の、逆のアプローチ方法をとっているのかなあと思いました。本人の名前でアナザーストーリーを展開するジャニーさん舞台に対して、トニセンは役に本人の話を入れてくる。

意図されているのかはもちろんわかりませんが、「プレゾンのようなライフワークとなる3人舞台をやりたい」という発言もあり、「本人と役の境目を曖昧にする」という方向になったのは、自然な流れだったのかも?と勝手に思いました。トニセンは少年隊の弟分でありながら、コンサートとかでもどこかジャニーズの伝統をパロディにするというか、少し外部の目線が入っていることが多いように思います。デビューしてからも少年隊のプレゾンに出続けたにもかかわらず、なのか、出続けていたから、なのか。トニらしい捻り方なのかなという印象がありました。

物語について

観てみて意外だったのは、全然40代の話じゃなかったこと!作中でも長谷川が高校の時に小説家を目指して、数年後編集者にフィッツジェラルドの話をされて、10年後に手紙の代筆を始めて……と考えると、やっぱ設定的にみんな30そこそこなんじゃ?

不惑」で1本作る話もあったとインタビューにあったので、もっと40代の葛藤みたいな、「もう若い頃と同じように走れない……」といった話なのかな〜と思ってたら「結局やる気のきっかけもやめようとするきっかけも立ち直るきっかけも女かい!!!」*2とつっこんでしまった。最初見た時は「泣ける〜〜」とか思ってたんですけど、よく考えるとね!ただ、今回は「迷い、戸惑うことで自分を再発見する」ということが作品で表されていたと思うので、もしかしたらこの女性というのは、”真理”のメタファーみたいなものだったのかもしれません。

この、長谷川と三池が好きな女性が由利の妹っていうのも何かわかるというか。三池と長谷川は同じものを求めていて互いに意識するし、由利は妹を介して2人と結びつくという。夏目漱石作品みたいだ。

まあそれは最終的に分かることなんで、作中の三人の関係としてはそんなに描かれはしないんですけど、実は"彼女(由利の妹)"を中心に置いた時、三池と長谷川はライバル同士として向き合う形になり、由利は両方に寄り添って三池の相棒&長谷川の理解者として見守るような形になるのが、すごくトニセンぽい。

実際、長谷川の小説世界の中で、長谷川は三池のことをより強く意識しているように読めると思います*3。三池と長谷川は表現者で、でも長谷川は自分の表現より代弁者であることを選び、由利は研究者、というのもわかるわかる。博担としてなんかめっちゃわかる。

クラブ33

最後のらへんはもう雰囲気でなるほど〜!??って感じだったのですが、あの「手紙は宛先に届く」みたいなやつすごい聞いたことあるぞ!?と思ったらあれですね、ラカンの盗まれた手紙についてのセミネール…100年ぶりくらいにそんなようなことを思いだし、教科書を引っ張り出してみたけど、よんでたら眠くなってしまった……。

作中で考えると、結局”彼女”の現状を知った長谷川が2人をクラブに呼び出して仲良くなり、その後小説を通して2人を集合的無意識にアクセスさせたということであったのかな??長谷っちすごいよ。三池さんも予知能力持ってるから、由利さんはこれから研究対象に困らない!よかったよ!

最後結局宇宙(の外側)なの?長谷川の小説の中なの?集合的無意識なの?集団催眠なの?ってなったけど、宇宙も長谷川の夢の中の宇宙だから、やっぱり長谷川の小説を通して集合的無意識にアクセスしたということで、でもその集合的無意識が宇宙にたとえられていて、冒頭の「宇宙には自分と結びついた星があるんだって」という言葉につながっているってことなのかな。

その他、3人について

長野さんの歌はとてもうまかったです。『The Covers』の時にびっくりしたままだった……。『Forever Plaid』再演時も安定したな〜と思ったけど、楽曲の音域も広かったし音も複雑だし、ここまでとは思わなかったんですよね。でも今回は歌いなれた歌ばかりだったこともあったのか、とても良かったです。ホルンのおかげで息の出し方が良くなったとかあるのかな!?「ちぎれた翼」は多分坂本さんのハモが強すぎて主旋律が迷子になっており、さすがミュージカルスタアさまでした。

セットを動かす時に振りを付ける演出とかは、トニに合いそうだなあと思ってたからああいう感じやってくれて良かったですね。金管楽器は決して上手ではないけど本当にガチで引いてるからびっくりした!あとは3人が出てきた時のシルエット、スタイルが良い!!と改めて思いました。帝劇で死ぬほどスタイルの良い平成生まれを見てきたはずなのに……。いやでもJr.たちはなんか、アニメキャラみたいなスタイルの良さなんですよ。トニはすごく身近なスタイルの良さだから、リアリティがある。

ここ最近、真面目末っ子甘えん坊みたいな役が続いていた長野さん(44)のクールな役を見れたのもすごく良かったです。由利さん、核心に近づいてきた時の「これは仮説だが」とかめっちゃ言い方かっこよくないですか!しかも研究室は白衣だし!こういう頭良さそうな役見たかった〜!無垢ないのはらもえらいいたいけでかわいかったです。坂本さんは……割とよくやってるキャラだったかな!?でもMARDER FOR TOWで鍛えたからか、チンピラもおばあちゃんもパワーアップしてた気がします。博のマダムは造作の整ったマダムだった。

ネタバレについて

最後にちょろっと思ったとこを。まあTwitterはネタバレ、というか感想を書きづらい空気だったな〜としみじみ思いました。個人的にモヤっとした点は2点あって、1点目はネタバレの範囲がどんどんエスカレートしていること。ストーリー上のネタバレだけでなく、役柄についてとか、楽器を吹くとか、もはや何がネタバレと言われるのかわからなすぎて……。

2点目は、それによって感想を書ける空気じゃなくなっていたこと。まあ別に自分はストーリーのネタバレをしないまでも感想は語るよとか、自分はどんなネタバレも避けるよとか、それぞれ個人のスタンスがあるのなら全然いいんだと思うんだけど、なんか感想を書いたら誰の地雷になるかわからない、と思うと「め、めんどくせーーーーー」という気持ちになりました。

これ別に、感想なんてブログで書けやと言われたら本当にそうで、最終的にはブログに書いたしそれはそれでいいんですよね。結局、自分がTwitterに感想を書きたいとか書けないとかではなく、窮屈な雰囲気にモヤモヤしていたのかな〜と後から思いました。

*1:インタビューでも「打ち合わせの時の一言が反映されてる!」とか言ってたのでファンが知るレベルの話ではないのかも?

*2:特に三池

*3:教授役が井ノ原さんだから由利と長谷川を同時に出せないというのはあるんだけど