【ジャニヲタ怖い話】烏骨鶏と博の神隠し

8月22日、一人の人間が忽然と姿を消しました。彼は、約13時間後、何事もなかったかのように我々の前に現れました……。

今回は、晩夏にふさわしい、怖い話をお届けしましょう。

 

その日、私はお菓子やジュースを買い込んで、TVの前にスタンバイしていました。待ちに待った「24時間テレビ」放映日。今年のメインパーソナリティーはV6とHey! Say! JUMP、初の二世代パーソナリティーという触れ込みであり、総勢15名が毎日入れ替わりTVに出て、気合は十分だったのです。V6はデビュー20周年を目前にしたベテラン、Hey! Say! JUMPは全員が平成生まれの若者達。18時半からのOPは15名で歌う「WAになっておどろう」で飾られ、24時間彼らの華々しい活躍が見られると思っていました。そう、このときまでは……。

異変が起きたのは、20時半頃でした。「長野(博)くんがいない……」Twitter上にちらほらと見えるつぶやき。驚いて確認してみると、確かにいない。しかし、24時間もあるのです。途中で人が入れ替わり、少しずつ休憩をとっているのだろう。そのときはそう思っていました。
スペシャルドラマがはじまった21時半ごろより、現地の観覧終了組からのレポートが少しずつ入り始めるようになました。ドラマに切り替わる際に、V6とHey! Say! JUMPのミニライブがあったこと、そこに長野博の姿はなかったこと*1、ロケに行っていると説明があったこと。
今から、ロケ……?私は、いやな予感がしました。ドラマが終われば、お待ちかねのコーナーが待っています。「3世代ジャニーズ 真夏の生男子会しやがれ」と題されたトークコーナーでは、メインパーソナリティーの15名に加えて、天下のアイドル・嵐が参加することになっています。ジャニヲタが一番楽しみにしているコーナーといっても過言ではありません。いやだな〜、こわいな〜……そう思いながらも、ジャニーズ事務所に所属するグループが3つも集まるんだから、帰ってくるだろう、たかをくくっていました。

 

……懸命な読者の皆様にはもうおわかりでしょう。トークコーナーがはじまっても、長野博は、姿を消したままだったのです。「明日の中継のために用意しなきゃいけないんで、どうしても来れなかったらしいんだよ。まあ、本当かはわからないけど……」坂本昌行が説明をすると、自分の口から悲鳴が漏れるのがわかりました。ま、まさか……こんな、ジャニヲタ的に一番大切なコーナーに出ないなんて、そんなことがあっていいはずない……。

事前の情報によると、長野の担当しているコーナーは「イルカと泳ぎたい少女の夢を叶える」というもの。もしかして、イルカの島に向かっているんじゃ……?でもなんで抜けなければならないのか……?メインパーソナリティーなのに明日の朝までTVに出ないということ……?そんな気持ちを抱えながら、TVの中で繰り広げられる、3グループの楽しいトーク。ローションマット上で踊る深夜の見本のようなコーナー。極め付けは19人の心をひとつにして「WAになってアイスを食べる」世界記録に挑戦。そのどこにも長野博の姿はありません。もしかして、長野博って、我々の見ていた共同幻想だったのでは……?Twitter上の長野博担もまた、ひとりひとりと姿を消していき、静寂が訪れようとしていました。

 

忽然と姿を消した長野博……その行方が分かったのは、早朝5時ごろ。

 

TVの中には、石川県金沢市の竹林に佇む長野博の姿がありました。「とても風情のある、風通しのいい竹林なんですけれども!」にこやかに話す長野博。薄暗い竹林、白装束にも見えるような白つなぎに身を包んだ長野博の足元にはおびただしい数の白い物体がうごめいていました。「ヒッ……」私は思わず声を上げてしまいました。

 

「約2万羽の烏骨鶏が飼育されてるんですね〜!」

 

企業のコールセンターなどでは、話す人の笑顔がわかるような声を「笑声」と呼ぶのだといいます。長野博は間違いなく「笑声」を駆使しながら、TVの前の我々に向かって近づいてきます。
そのまま烏骨鶏の鶏舎に入った長野博は、生みたての卵を手に取り、「今温めてたのかな〜?これね〜?あ〜ごめんねごめんね!」と烏骨鶏に優しく話しかけつつ卵を強奪。ごはんにかけて食べ始めたのです……!

「黄身がまとわりつくような濃さで、おしょうゆも、うまみあるんですけど甘くて、素材を、じゃましないという!」

薄暗い竹林で行われる烏骨鶏レポ。中継時間、およそ10分。まるでそれは、神域からのメッセージのようでした。そしてまた長野博は消えました。

彼が再び現世*2に姿をあらわしたのは、それから約4時間後の、9時14分でした。

 

22日の20時15分ごろから、23日の9時14分ごろまで、約13時間に及ぶ神隠し。長野博は24時間中*3の13時間、神に隠されていました。

 

「楽しそうにしている姿を見れてよかったじゃないか」
「きっと卵かけごはんを食べたかったんだ」
「ロケに協力してくれる人にも感謝」
「裏で移動するなんて大変じゃないか」
「事前番組から約40時間も働いているのだから、おいしいものを食べられてよかった」

私の脳内ジャニヲタ大奥(長年ジャニヲタをやっていると、誰かが言いだしそうな意見がすぐに想像できるのです)でも、様々な意見が渦巻いていました。しかし、「しやがれの男子会に参加する自担の姿が見たかった」それがすべてだと言わざるを得ません。本人がどんなに TKG(卵かけごはん)を堪能していようが、見たかったものは見たかった。番組編成を、もっとなんとかしてくれていれば……自担がTVから消える恐怖を体験しなくてよかったのかもしれない……。

ちなみに、長野博がメインで担当した「イルカと泳ぎたい少女の夢を叶える」はすでに収録済だったため、武道館で映像を見るという形式でした。このロケ自体は素晴らしいものであり、さらに子供達とのSTOMPや2グループのメドレーライブ披露、どれも素敵な企画で、それだけに、この恐怖体験だけが我々に大きなトラウマを残しました。

 

これが、24時間テレビで起こったおそろしい神隠しの顛末です。自分には関係ないって?いやいや、お気をつけください。あなたの自担のすぐそばにも、別の世界は広がっているのですから……。

*1:和太鼓の途中から消えたらしい

*2:日本武道館

*3:正確に言うと、24時間テレビって27時間くらいやってるんですが