本当に今さらかなと思いつつ、コンサートDVDも発売されましたので、「V6 LIVE TOUR 2015 -SINCE 1995~FOREVER-」を個人的な感想で振り返っていきます。
演出がない、と言われるくらいにシンプル
今回のコンサートを見た友人たちが口々に言っていたのが「ほとんど演出がない」といったことでした。たぶんそれは演出がないわけではなく、「シンプルに見せる演出」ということなのですが、そもそもジャニーズの演出は「過剰」が基本だから、それと比べて「演出がない」と思ってしまう(ネガティブな意味ではなく)のはよくわかる気がします。
実際にコンサートのMCでも、井ノ原さんが「三宅が、けずってもけずってもまだ足りない、まだ削げるって」といった話をしていたと思うんですけど、ちょっとこれがうろおぼえすぎてどこの会場でどんな文脈で言っていたのか思い出せず……*1。今回のコンサートについていろいろ雑誌やパンフレット等で話はされているのですが、実はコンサートの内容自体には全然触れられていないんですよね。「20周年だからみんなが楽しめるコンサートにしたい」「気合が入ってる」的な話が多いなという気がします。
全体の構成としては、前半がファン投票による人気曲を中心とした展開*2、後半がシングル曲を編み直した「39 Symphony」中心の展開となっています。後半の39を手がけられたのはお馴染みの西寺郷太さん&corin.さん。この制作秘話は、西寺さんのブログで読むことができます*3。
「V6、20周年のコンサートがもうすぐ始まる。今回はベスト盤発売でこれまでの歴代シングル曲を全曲なんらかの形でセットリストに織り込みたい。本編セットリストをメンバーと考えて、残りの39曲を後半の目玉として怒涛のメドレーにできないかと思っている。39曲で、制限時間は約40分。普通に考えると一曲1分計算だが、バラードなどにスポットを当てたり盛り上げることも考えるとかなり困難な挑戦かもしれない。
生身っぽすぎないスタイリッシュさ
とてもシンプルな演出だったのですが、一方で「生身っぽさ」が強かったかというと、とても身体性を感じた一方、それがすべてでない気がするというか。たとえばバンドのライブなどと比べたら、全然違う印象を受けました。象徴的なのは照明ではないかと思います。バンドのライブなどのシンプルな演出は、本人たちの身体性を目立たせるためのものだと思うのですが、V6の場合は、ステージ全体の絵面が理性的な制御の上で、バランスをとられているように見えました。
写真を貼りたいのは山々ですが、それはちょっと難しいかなと思うので*4、照明について触れてくださった方の素晴らしいツイートを……。
【V6 LIVE TOUR 2015】※曲・照明ネタバレ注意※
— 妖怪シンメババァ (@cndy_knty) 2015, 9月 21
基本的にエグい照明だったけど中でも個人的に好きだった照明その①
レーザー光線でぐるりと囲まれるのはよくあるけどそれこじ開けて出てくるの想定の斜め上でかっこよすぎた… pic.twitter.com/9uSycHA4xy
【V6 LIVE TOUR 2015】※照明ネタバレ注意※
— 妖怪シンメババァ (@cndy_knty) 2015, 9月 21
個人的に好きだった照明その②
見ながら「うわこれは変態照明!!!!」って思ったのがメインステージの照明。 pic.twitter.com/Hd2EwwRonU
2つ目の照明は「ドットミラーイメージ」というらしい。会場全体の黒い空間の中で、光の筋が6人を閉じ込めるようになっていました。これは6人を照らすものではなく、会場デザインの中で必要な照明だったと思います。
また特に曲後半、狂ったように入りみだれるレーザーが圧巻だった「SP」ですが、引きの絵で見た時に実は会場の上半分にほとんど光が当たっていない瞬間が存在しています。すべての空間を隙間なく演出するのがジャニーズイズム的、という中において、上半分を削ぐことで、めちゃくちゃスタイリッシュになっていたんですよね。
こ、これ伝わりますかね……。感じてください…。
レーザーも普通は上から下にとか、下から上にとか、会場全体を通るようにしているんだけど、非常に低い位置を貫通していたのに、ぞくっといたしました。具体的に言うと、メンバーの胸元あたりを水平に飛び交っていて。このレーザーの幅が広がっていくので、まるで雲の中にでもいるようだというか、電磁波の中に身を置いているようなV6の姿がとにかくかっこいい。もしかしたら他のコンサートでもやってるのかもしれませんが、私はこういう使い方を見たのは初めてだったはず。最初見た時、メンバーの背中にレーザーが当たってキラキラしていた理由がわからず、何か衣装に照明装置でも入ってるのかな? と思ってしまいました。
空間全体をプロデュースする、という点において、V6が洗練されていることがよくわかります。もちろん、舞台監督や照明チームなど外部スタッフの方の手による部分は大きいでしょうが、最終的に選択したのは結局V6だろうと思うわけです。もっとジャニーズっぽく過剰にしたければ、そう言うだけの権限はあるだろうし。実際にDVDに映っている舞台裏でも、スタッフに細かく意見を出している姿を見ることができます。
要素を削いでシンプルにしつつ、全体像から計算して演出する、という点では、前述の「39 Symphony」も同じ発想のような印象を受けました。「シングル曲をメドレーにする」って、究極にシンプルだと思うのですが、それを分解して編み直してひとつの大きな全体像をつくっているわけですね。1点に集中するわけではなく、全体像を描いているところ、そこから複雑に計算を行い、細分まで制御が行き届いているあたりに、スタイリッシュさを感じました。
全体がデザインされている感じ
ちなみに初見で気になっていたのは「エモいのかエモくないのか」という点だったんですが、これはなんか回を追うごとにエモさが極まっていった……。
初見では実は「あんまりエモくない気がする」と思っていました。それは振り返ると、シンプルすぎる構成によったのかもしれません。「曲を聴いた時に思い出がよみがえって……」といった話をしている人が多かったように思うのですが、あんまり私はアイドルの曲に自分の思いをのせたことがなく、どちらかというと見出しているのは彼らのストーリーだったりします。だから、最初に行った大阪公演を見終わったあとにパンフを読んで、いろいろな雑誌を読んでどんどんV6自体のストーリーに高ぶっていったことが、その後の公演を見る気持ちに反映されていたのかもしれません*5。
つまりは構成としてもある程度、自分の思いを反映させる余白があったわけですが、これが「自分の思い出」派でも、「自分とV6の思い出」派でも、「V6の物語」派でも、「初めてV6を見る」派でも、最終的には20年という月日が詰まった楽曲「Wait for you」「〜此処から〜」に思いが集約されていくということは変わらず(たぶん)。だから、今回V6が提供してくれたコンサートは、全体がデザインされた上で、余白を多く残したものだったのかなあと思いました。
それだけ計算されたシンプルな空間だったので、最後の最後、11月1日に、メンバーの想定していなかったであろうリボンシャワーが降り注いだときの、その場でハプニングのように生まれた流れを見守る感じは改めてすごかったなと思います。幸せな20周年をありがとうございました。
・当日の様子とか、これまでのコンサートへの雑感とか