ジャニヲタブログ文化におけるTwitterの影響について

先日「なぜジャニヲタの間でブログが盛り上がってるのか」と聞かれました。たしかになーと思ってずっと考えていたところ、大体Twitterのせいじゃないか、と思って来たのでジャニヲタ文化の記録のためにも一度まとめてみることにいたします。

Twitter以前

その前に簡単に、Twitterが広まる以前はどんなことしていたか。まず浮かぶのは個人のファンサイトです。主なコンテンツとしてはコンサートレポや番組のレポ。どのサイトにも必ず「V6とは?」「KinKi Kidsとは?」といった紹介が設けられていて、ファンになりたてのときはなめるように読みこんだし*1、ファンになったあとも人によってちょっとずつ違うアイドル像を読むのが好きでした。また、ファンサイトの掲示板で出会った人と今もつながっていたりします。
ファンサイトに設置されていたのが日記で、これはサイト内部で展開している方もいれば、外部サービスを利用している方もいました。日記にはもう少し私的なことが書かれていて、TV感想などこちらに書いている方もいましたね。2004年頃からだんだんブログになっていったように思います。
サイトはwebリングやサーチに登録されていて、そこから検索することができました。相互リンクからたどっていって面白いサイトを見つけたりもしていました。ここらへんは大体ジャニーズ以外のファンの人も変わらないのではないでしょうか。2005年ごろから台頭して来たmixi、そしてブログの発達により、だんだんサイトは姿を消していきました。
ファンサイトの他にもうひとつ、大きかったのは某匿名掲示板ですね。ファンサイトはあくまでも個人の展開するもので、出会う人もいわゆる「同担」でしたが、掲示板は他のグループのファンの姿も見ることができる「集合」の場という面も持っていました。書き込んではいなくても、情報を得るためにROMっていた方もたくさんいたのではないかなー。J系板はアイドル名もスレ名もとにかく伏せて伏せてうっかりageると怒られ、容易に外部から見つからないように相当気を配っていました。
そんなところへあらわれたTwitter。私個人の話で恐縮ですが、登録するようになったのは映画「SP」がきっかけでした。SPの公式アカウントで撮影中のエピソードが語られるので、情報を得るためにフォローしていったという感じです(2009年)。その後、どんどんTwitterのジャニヲタは増えていったわけですが、さて一体何が変わっていったのでしょうか。

ブログ流通の場としてのTwitter

これはわかりやすいですね。ブログやサイトなどで面白い記事があっても、それはそのグループの情報をあえて取りに来た人の目に触れるだけで、たくさんのジャニヲタに届く訳ではありませんでした。しかし今は、多くのジャニヲタが情報インフラとしてTwitterアカウントを持っているために、RTなどによってブログの記事が拡散されやすくなっています。話題になった記事は、書いた人をフォローしてなくても流れて来て読んだりしますもんね。
Twitter、及びFacebookが大きく広まったのが2010〜2011年頃だと言われています。そこから、好きなグループを超えて「ジャニヲタ」が日常的につながっていき、情報が共有されるようになっていったのです。

瞬間としてのTwitter、ストックとしてのブログ

Twitterが出てくる以前は、長文でまとまったこと、かつコンサートレポートなど実際にあったストックしたいことを書く「公」の場がサイト、比較的短文で日々のことやとりとめのない自分の思いなどを書く「私」の場がブログ、という切り分けをしていた方が多かったと思います。私もブログの記事をコンテンツだとは思ってなくて、日々の記録くらいの意識でした。Twitterが出て来てからは、その意識が若干スライドした感じです。つまり、日々の瞬間のできごとを短文で書くのがTwitter、まとまったコンテンツとしてストックしたいものを書くのがブログとなりました*2
ここで注目したいのが、ブログの立ち位置自体は変化したけど「私」の場としての性質は残っているということです。たとえば最近話題となった「担降り宣言」がありましたが、サイトがあった時代には、コンテンツとしてこのような「私」のことを書くことはあまりなかったように思います*3
それがTwitterの登場とファンサイトの減少によって、エッセイ的なコンテンツが主流となっていった。そうなると、逆に対象のことを何も知らなくても「熱量がすごい」「このグループのことはわからないけど気持ちはわかる」と楽しめる人が広がるんですね。ちょうど『ZUCCA×ZUCA』(はるな檸檬/講談社/2010年)、『おっかけ!』(竹内佐千子/ブックマン社/2010年)、『バンギャルちゃんの日常』(蟹めんま/エンターブレイン/2012年)、『ジャニヲタあるある』(みきーる/アスペクト/2012年)など「オタク女子の生態」をユーモア交えて語るコンテンツが人気となっているのも、無関係ではないのかなあ*4

ちなみにジャニヲタの生態を語る人として、草分け的存在だったのは松本美香さんかなーと思っています。ユリイカ文化系女子カタログ』(青土社/2005年11月号)で初めて文章を読んだときは衝撃的でしたし、「文化系女子」くくりの中にジャニヲタも入っていいんだ!?と驚きました。『ジャニヲタ 女のケモノ道』(松本美香/双葉社/2007年)が発売されたときは「ジャニヲタ」の生態を振り返るのってこんなに面白いんだー!と新たな発見でした。

明るみとしてのTwitter

今まで書いたように、ジャニヲタはずっとインターネット上に生息はしていました。しかし、外部から見つからないように注意深く隠れていたために発見されてはいなかったのです。
もしこの記事をジャニヲタじゃない人が見ていたら、いやいやバカなジャニヲタが姿を現してたじゃないか、これだからジャニヲタは…と話題になってたじゃないか、と言うかもしれませんが、まさにそう思われるのがわかっていて隠れたがっている面もあったんですね。だからよけいに外に出るのは何か問題が起こったときだけだったのかもしれません。まあそもそも特に目立つ手段がなかったのですが、更に用心して伏せ字にして検索に引っかからないようにしたりする人もいたわけです。

何から姿を隠していたのかというと、いくつかあげられます。

(1)ジャニーズを馬鹿にしている人(アンチ含む)
見つかって馬鹿にされたりするのがやだな〜という気持ち

(2)ジャニヲタ全般
あくまで主役はジャニーズ、自分は”ファン”のため、あんまり目立ちすぎたくはない、同好の士とだけ交流を深めたいという気持ち(目立ったらやっかまれる、自己顕示欲が強い人だと思われたくない…というのもあり)

(3)家族や学校、会社などのリアルなつながりの人
隠れヲタの場合。隠れヲタじゃなくても、ヲタ友達との会話ってなんか恥ずかしかったりする。

(4)事務所、ファミリークラブ

人によって違うかもしれないですが、なんだかんだ警戒していたのは(4)だったのではないでしょうか。心理的な面で言えば、アイドルに対して好き勝手言っているのをあまり本人たちに知られたくない気持ちがあり、物理的(?)な面で言えば、公式に見つかってネット活動が禁止されたり制裁を加えられたりしたら嫌だ! という気持ちがありました。何しろ、ジャニーズ事務所はインターネットに厳しいことで有名です。ブログを書いたくらいで注意されることはないでしょうが、何がOKで何がNGかわからない恐怖があります。サイトなどを作っていたらなおさら怖かった。別に法律的に問題なくても、事務所的に問題だったらどうにもならないのです*5
Twitterが広まってくると、レポ需要などもありジャニヲタ同士のRTが増えていき、逆に「見つかってはいけない」気持ちは減っていきました。ジャニヲタにはもともと「共有したい」欲の強い人が多い印象なので、インフラが整って一気に加速していった感があります。また、番組に対するTwitter反響が評価の指針となってくれば、もはや隠れることが自分の好きなアイドルのデメリットにもなる時代となってしまったのです。あややさんのようなジャニヲタ以外に話題となる人が出てきたことも大きいと思います。「あんな風に書きたい」「気持ちを記しておきたい」と思ってブログを始めた方も多いでしょう。

自分を振り返ると、なかなか複雑な気持ちを抱えて来たように思います。語りたい、共有したいという気持ちはとてもあるので反応をもらえるのはとてもうれしいし、インターネットで言葉を発する以上誰に見られても話題にされても良いと思うべきだ! ここは自由の場だぜ!?と考える一方で、もしもジャニーズアンチの人に見つかってすごくディスられたらやだな〜とか、他のファンの人に「あいつうざい」と思われたらやだな〜とか、面白おかしく書いたことをFCに見つかって怒られたら…とか(たぶんない)*6びくびくしたりする。まあそんな気持ちもだいぶ薄れたし、自分が誰かにポジティブに話題にされるのはとてもうれしいものの、他人に対してはこう有名な人ですら名前を出すのにまだちょっと抵抗があって、「本人がいやに思うのでは…」「何か迷惑をかけるのでは…」という思いがちらっとよぎりつつ「これがネットのいいところだし!」と意識的にやっていこうとしているとこはあります。「隠れなければ」という気持ちは根深い…。*7
最近多いジャニヲタはてなブログのよいところは、「この人は話題にされても大丈夫と思ってるんだな」と判断できるとこです。「はてなブログを更新しました」というポストをRTすれば良いのもハードルが低いし。

また数年後には全然様子が変わっていたりするのかな。逆に誰かがめっちゃ炎上・ジャニヲタ以外からぼこぼこにされるケースが出て、みんな「隠れなきゃ怖い!」と潜っていく可能性もなきにしもあらず。

Twitterの反動としてのブログ

これは最初と近いですが、Twitterが広まるにつれ「長文で語りたい/読みたい」という欲求が再度登場してきたのではないかと思っています。短文文化主流になって3年くらいで長文に飢えて来たのかな〜〜。*8

 

こんな感じでジャニヲタのブログ文化におけるTwitterの影響について考えてみました。ほかにも女子アイドルヲタ文化の輸入(あっちはもっとずっとオープンに思える)、女性の高学歴化(スマ暦に続きまだ推します)、二次創作文化の制限(そもそも興味ない人が多い)などもあるんかな〜。何かの原因って複数の要素があるから難しいですね。

 

(2015/1/27追記)

Twitter先住民こそはてなの民だったという新たな証言が…!
私のまわりのV6担、キンキ担は大体はてなじゃなかったので好きなグループによっても違うのかもしれない


▼「GREEのジャニオタ」という言葉に驚き!

余談1 ブログやTwitterをやらないジャニヲタも多い

こないだ高校時代の友人(未だジャニヲタ)に会ったら、他の友達(未だジャニヲタ)について「この子、Twitterとかブログとかやってるんだよ〜。やばくない?」と言われて「や、やばいの…!?」となった。ネット活動をしていないファンも意外と存在しているんだろうな。
逆にFacebook等とブログ・Twitterの相性が悪いのでは…という印象について、友達の千紘さんが下記のようにまとめてくれました。

余談2 はてなブログについて

はてなブログ隆盛については、もちろん人気ブログの影響が大きそうですが、そもそも前身のはてなダイアリーに長文語り好きジャニヲタが生息していたことがあるのかなーとか思います。引用・注釈などが気軽につけられるし、他のブログサービスに比べて長文を投下しやすいですよね。あと上の方でも書いたように、流通させるのに心理的ハードルが低い。
また他ブログサービスはカテゴリ内でのランキングを出していたのですが、これがあんまりジャニヲタに合わなかったため浸透していなかったのかもしれません。ジャニヲタはジャニーズが絶対的に上の存在のため、ヲタは下々の者として平等思想が強く、ヲタ内のランキングよりも「キーワード」でつながれる方が連帯しやすかったし、Twitter層との親和性が高く、目に触れやすかったのでは…と考えています。2006年からはじまった「ジャニーズ楽曲大賞」も、初期ははてなのキーワードでつながっていたように記憶しています。*9

余談3 今後の展開

エッセイ的なものって意外と向いてる人と向いていない人がいるから*10、今後は自分の専攻や仕事などの得意分野とジャニーズを絡めた記事なども多く出てくるかもしれない。Twitterがある以上、番組感想とかよりもコラム的なものの方が求められていくとは思いますが、毎日の記録みたいなものをやってくれるブログがまた増えてもうれしいな〜などと思っています。社会人は厳しいけどね…。

年表芸人なので微妙につくってみたんですけど、色味とか気持ち悪いからあとで変えるかもしれない…。

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(2015/1/27追記)

そういえば最近、iPhoneのメモ帳に長文を書いたものをキャプチャしてTwitterに複数毎画像として載せる…といった手法を見て興味深かったです。ブログとは違う長文の形ですね。
また長文というのは、解だけを主張するのではなく、式を証明しなければならないときに必要なのかもしれないとも思いました。例えば「担降りした」という解だけじゃだめなとき。レポートや論文と一緒か。

*1:wikipediaNAVERまとめもなかったから

*2:Twitterの140字自体で何かを発信している方も多くいますが

*3:サイトの自己紹介などとして存在はしていた

*4:最近の記事で「女子大生が語る」とか「○○歳の○○が語る」とか、属性を先に出しているのもおおーー新世代と思っていた

*5:サイトを作ってる人には「二次創作」(BL的要素はない)を扱っている人もけっこういたので、その規範が普通のファンサイトに持ち込まれたところもあるのかもしれない

*6:ジャニヲタの中でもこれ共有できる人とできない人がいるんだけど、ファミクラってファンの上位組織でつーこさんは上司みたいな存在だと思ってるので、上司に見つかって怒られたらどうしよう><みたいな感覚なんです

*7:最近、こういう気持ちが「見えない敵を怖がるオタク女子の同調圧力」といった感じで話題になっており、どこのオタクもそうなのか〜と思った。でも男性のオタクはあんまりないんですかね?

*8:だんだん疲れてきた

*9:ただし、はてなスターなどに慣れるのに時間かかったなー!常にログインしてないですからね。最近はアプリから見ることが多い

*10:私は向いていない方…