ジャニーズ舞台における「Show must go on」の変遷とは…

ジャニーズ舞台でおなじみのセリフ「Show must go on」…昔のPLAYZONEビデオを見ているうちに、このセリフの使われ方の変遷に興味が出てきてしまいました。「構成・脚本演出:ジャニー喜多川」となっている『PLAYZONE '91 SHOCK』『SHOCK』『Endless SHOCK』『Johnny's world』という4作を通して、約20年のなかでどのように進化してきたのか、まとめておきたいな~と思います。*1

ちなみにShow must go onとは、英語で慣用句的に使われているそうです。舞台上ではハプニングなどがあっても「ショーを続けなければいけない」ことから転じて、「止めるわけにはいかない」「問題があっても続けなければならない」*2ときに使うようになったらしい。

※下記より、舞台のネタバレだらけです。

 1991年『PLAYZONE '91 SHOCK』

この舞台は主演・少年隊本人達の物語という設定。「Show must go on」が出てくるのは、その日のステージを控えた場面です。会場まで移動している途中でニシキとウエクサが怪我をしてしまい、その日の幕が開けられないかもしれない…1人無事だったヒガシは、軽傷ですんだニシキやまわりのスタッフにむかって「ウエクサの代わりのメンバーを入れて決行しよう」と提案するも受け入れられず、「1人でやってやる!」と言い出します。

ヒガシ「だめだ、客席には大勢の人たちが待っている。何日も前から楽しみにしてくれている。何があろうと、ショーの幕は開けなければならない。それが俺たちの宿命だ。お前にもわかっているはずだ!」

ヒガシ「俺たちにこんなときもあんなときもない、ステージがあって観客がいる、ただそれだけだ!何があろうと、どんなことが起ころうと、ショーはやり続ける!俺たちがショーを続けていればウエクサだって、またけがを治して舞台に立てるようになるかもしれない」

ヒガシ「(独白)俺は意地をはっているのか?いや、そうじゃない、俺は俺のためにステージに立つんじゃない!これはウエクサのためだ、ニシキのためだ」

ヒガシ「(歌)ステージには夢の明日がある ステージにはない人生がある だからShow must go on だからShow must go on」

ここでの「Show must go on」は自問自答の中、迷いを持った状態で出てくるのが特徴です。このときはまだジャニーズ舞台に根付いていなかった理念だったと言えるでしょう。劇中の「全国公演」がコンサートなのかショーなのかはわかりませんが、アンダースタディ(代役)を置いておくのが当たり前なミュージカル舞台と、メンバーの替えがきかないアイドル的舞台との間で葛藤しているようにも思えます。

(現在のジャニーズの若手グループ*3では、怪我どころか他の仕事とスケジュールがかぶったときもJr.を代役にして公演やるよ!Show must go onだよ!という展開が見受けられたりしますけど…)

ヒガシは、ショーを続ける1番の理由を「観客が待っているから」としながら、「怪我をしたメンバーがかえってくる場所を守る」というのも意義として挙げています。「Show must go on」は、自分たちの夢を守るためでもあるのですね。

 またセリフを丁寧に見ると、「Show must go on」は「ハプニングが起こってもショーを続ける(1回のショーの中の話)」と「ショーを作り続けていく(一生の話)」という2つの意味で使われていることがわかります。この2つの意味については、後々の作品でも掘り下げられていくこととなります。

 

さて『PLAYZONE '91 SHOCK』は1991年8月に行われた公演ですが、約半年ほど前、1991年1月30日*4にリリースされた1枚のアルバムがありました。世界的ロックバンド・Queenの『イニュエンドウ』です。この中には、『The Show Must Go On』『輝ける日々』という曲が収録されていました。そして『PLAYZONE '91 SHOCK』内でキーとなる楽曲が『Show must go on』『かがやきの日々』で…ねえ…これ…影響受けてない!?

Queen『The Show Must Go On』は、ボーカルであるフレディ・マーキュリーの死期を前にして出した曲であり、人生と舞台とを重ねながら「ショーを続けなければならない」と言う歌詞となっています。対して『PLAYZONE '91 SHOCK』では「ステージでショーを続けること」と、言葉の意味をどストレートに表したセリフになっていますね。

 

2000年~2004年『SHOCK』

時を経て2000年から帝国劇場ではじまった堂本光一主演『SHOCK』シリーズ。こちらではもっと頻繁に「Show must go on」という言葉が使われています。まずは、ショーでのハプニングに見舞われたコウイチへ、亡き兄・ヒカル(堂本光一2役/2000年は東山紀之)が語りかける場面。

ヒカル「コウイチ…ショーを続けろ。何があろうと、何が起ころうとショーだけは続けなければ。Show must go on!」
コウイチ「兄貴…兄貴!みんな、ショーを続けよう!観客には、何事もなかったように思わせるんだ。Show must go on!!」

2000年代に入り、「Show must go on」が当たり前に根付いた信念として語られるようになっていますね。兄貴(幽霊)から話しかけられてすぐ行動に移すコウイチの姿から、既に「Show must go on」という言葉がたたきこまれていることがわかります。

 

次に出てくるのは病院の場面。91年SHOCKと同じように、カンパニーのメンバーであるツバサがバイク事故で怪我をしてしまい、コウイチはショーを続けようと主張します。

コウイチ「俺は意地を張っているんじゃない。ショーを続けることがツバサのためにもなる。それが俺なりのツバサへの責任の取り方なんだ」
コウイチ「ショーに命を捧げた兄貴に、俺は誓ったんだ。兄貴にかわって、俺が夢を叶える!その夢はツバサの夢でもあるんだ。みんながやらないっていうならそれでもいい!オレが1人でショーの幕を開ける。兄貴だって、今夜の幕を開けるって言うさ!」
コウイチ「今は俺たちにとってチャンスのとき!世界が俺たちを呼んでるんだよ! ツバサのためにも舞台を整えてやらないと」

コウイチ「(独白)地獄を恐れて何がはじまる…兄貴だって戦ったんだ。戦ってショーの幕を開け続けた! ツバサ、お前が戻ってくるまで、たった1人になってもショーの幕を開け続けてやる。何があろうと、何が起ころうと!Show must go on!」

 91年のヒガシが「俺は意地を張っているのか…?いや、そうじゃない!」と自問自答していたのに対して、コウイチはメンバーにむかって「俺は意地を張っているんじゃない」と堂々宣言。少年隊設定だったPLAYZONEと違って「ショーを行うカンパニー」「ブロードウェイからも誘いがある」という設定なので、演者自体よりも舞台を重視する姿勢が、強く表されています。てか逆に、アンダーがいなくてこれまで大丈夫だったのだろうかこのカンパニー…?メンバーは反対気味ですが、コウイチ自身はほとんど迷いなく進んでいくのです。

また、ショーを続けることは「(コウイチがけがをさせてしまった)ツバサへの責任を取ることになる」と明言しているのも見逃せません。観客のためという言葉がなくなり、「自分たちの夢を叶えるために、ここで穴をあけるわけにはいかない」というニュアンスが強くなっているように見えますね。

ちなみに物語はこのあと、悪魔が出てきて「ヒーヒッヒッヒ!実はすべて俺様の仕業だったんだよ!!」って言ってきたりするなかなかのトンデモ展開となります。

 

2005年~『Endless SHOCK』

コウイチ「大丈夫大丈夫!ショーにはハプニングがつきもの! みんなショーを続けよう!」

それまでの『SHOCK』シリーズとは大きくストーリーを変え、2005年から現在まで続いているのが『Endless SHOCK』。脚本や演出には、主演の光一さんが大幅に手を加えたそうです。*5冒頭から「ハプニングが起こるなかでもショーを続けよう!」という場面が繰り広げられますが、更に進化しているのは、「Show must go on」が作品自体のテーマとなっているところです。1番最近に発売された映像である2012年版からセリフを拾いながら見ていきましょう。

 

「Show must go on」という言葉が最初に登場するのは、1幕半ば。コウイチ率いるカンパニーへブロードウェイからの誘いが来た場面です。カンパニーのお父さん的存在であるウエクサ*6がつぶやきます。*7

ウエクサ「恐れを知らずにつっぱしっていく。人生にはそんな瞬間があるものです。あれから半年、コウイチたちはそれぞれの想いを乗せてブロードウェイのステージに立っている。夢のむこうに何を見つけ、何を失い、歩くのか…それはお前達次第だ。Show must go on、ブロードウェイの幕が今ひらく」 

この先何が起こるかわからないけど、ショーは続けなければならない…といったニュアンスで語られていますね。

 

次に出てくるのは、コウイチ達がブロードウェイで行っているショーの幕間、楽屋での場面。スタッフのミスで見せ場に出られなかったウチ*8が暴れたため、コウイチは「お前は周りが見えていない」と激しく叱責します。

コウイチ「歌ってたって踊ってたって、周りが見えてなきゃいいものはできない!Show must go on…何があってもショーは続けなければならないんだ。誰かがミスしたからって、ショーを止めるわけにはいかないだろう!」

コウイチ「ウチ、お前はもうステージに立つな。いい機会だから言わせてもらう。俺はもう次のショーを考えてる。そんなにこのショーにこだわるんだったら、勝手にやれよ!俺抜きでな!」

ウチ「わかってんのかよコウイチ、このカンパニーかきまわしてるのはお前なんだよ!」
コウイチ「今立ち止まったらそこで終わりがきちまうんだ」
ウチ「(刀を確認しながら)Show must go onかよ…」
ウエクサ「なあコウイチ…走り続けるって、疲れないか?走り続けることだけがすべてじゃない。ときには立ち止まって見つめ直すことも大事なんじゃないか」 

ショーでミスしたスタッフへ怒るウチに「何があってもショーは続けなければならない」(1回のショーの中の話)と説くことから、「立ち止まらずに新しいショーを作り続けなければならない」(一生の話)と宣言することへ話がシフトしていることがわかるでしょうか。

ここで語られる「Show must go on」には、2000年代『SHOCK』と同じように、自分の夢のためにはずっと走り続けなければいけない…といった想いが込められていますが、心配する者、ついていく者、反発する者、と、より様々な反応を引き起こしています。なぜ走り続けなければいけないのか?やめてしまってもいいのでは?2000年代『SHOCK』では当たり前となって語られていた信念に対する他の意見を示すことで、その意義が劇中で深堀りされていくのです。

 

叱責されたウチはこの後、ショーを止めてやろうと細工を仕込みますが、コウイチが「ショーを続ける」ことにこだわったために大事故を引き起こしてしまいます。「Show must go on」精神を否定しているようにも見えるのですが、下記のコウイチの言葉からすると「ショーを続けるという信念は正しかったけど対応の仕方が悪かった」ということで説明がついていますね。

コウイチ「あのとき、あの状況のなかでお前はショーを続けたんだよ!俺言ったよな!どんなことがあってもそれに対応するのは当たり前のことだって。対応できなかったのは…俺の方だ。お前はもう、ショーを続ける強い心をもってる!だから俺がいなかった間も事故のあったこの劇場でショーを続けていたんじゃないのか!ウチ…俺たちはひとつ苦しめば、ひとつ表現が見つかる。ひとつ傷つけば、また表現が作れる!ぼろぼろになる、その分だけ輝けるんだぞ」 

「Show must go on」が当たり前になった世界で、問われていたのは「走り続けること=Show must go on」の意味。91年のヒガシと違って、コウイチは実行することに迷いはないのです。しかし周りの問いかけによって、改めて「どうして自分は立ち止まっては行けないのか」「なぜ走り続けるのか」を考え、説明しなければいけなくなった。

ここでひとつコウイチが示したのは、表現者としての答えでした。Show must go onには苦しみが伴うが、そこから表現を生み出せば、より輝くことができるというのです。

ただし「俺たちは」と前置きしたことでわかるように、この答えはコウイチたちが出したものなので、すべての人にあてはまるわけではありません。それぞれ自分の人生に重ねて、走り続けることでつかめる輝きとは何なのか考えなければならないでしょう。人生に重ねるという点で、Queenの『The Show Must Go On』と近いテーマになっているように思います。

2012年~『Johnny's world』

2012年、2013年に上演されたのが『Johnny's world』。これまでの集大成とも言える派手な演出と、理解がむずかしいトンデモ世界観が賛否両論を呼んだ舞台です。この作品にも「Show must go on」が頻出している…どころか、『Endless SHOCK』と姉妹(兄弟?)的な作品だと言っていいのではないかと思っています。

早速、2013年の『Johnny's 2020 world』のセリフを元におっていきます。なお、映像化されていない作品のため、セリフについてはJohnny's 2020 world botさんからお借りしました。

プロデューサー「やめるな!ショーを続けろ!」
勝利「なんだって?このまま続けろっていうのか?あんたプロデューサーだろ!」
プロデューサー「ショーにハプニングはつきものだ」
勝利「これはハプニングじゃない!事故だ」
プロデューサー「やりたくないならやめろ!俺1人でやってやる!Show must go on!」 

「Show must go on」というセリフは冒頭から出てきますが、『SHOCK』シリーズとほぼ同じセリフ、同じ場面となっているのがおわかりでしょうか。ただし、雰囲気としては最初からかなりシリアスなものとなっており、プロデューサー(薮)は演者から非難されています。

これまでと同じようにこのプロデューサーも、「Show must go on」の2つ目の意味「ショーを作り続ける」ことについて語りますが、まったく迷いがありません。

プロデューサー「失敗を恐れるな!失敗をしなかった人間は何もしなかった者達だ。ショービジネスの世界に住む人間は死ぬまで何かを作り続けなければならない。それができない奴は今すぐここを去れ!」
プロデューサー「私は数え切れないほどのショーを作り上げた、その全ては私の狂気から生まれたものだ。見せてやろう!その全てをここに再現してやる!」

狂気って自覚しているんだ…って感じですね。しかしこのあと、13月を探していた勝利くんがマクベスを殺して歴史を変えてしまったためプロデューサーは洪水に巻き込まれて死んでしまいます。プロデューサーを追った勝利たちは、宇宙へ旅立つことに…な、何を言ってるかわからねーと思うがそういう話なので勘弁してください。

宇宙で知った事実…勝利くんたちのせいで、あの美しかった地球が灰色の星になってしまったというのです!

勝利「あの灰色の星、何ていうの?」
橋本「地球だ」
勝利「あれが?地球が青くない、一面灰色だ」
橋本「お前達は青い地球を取り戻したくないのか」
勝利「取り戻したいけど俺達にはどうにもできないよ」 

橋本「お前達はなぜショーを作り続ける」

勝利「それはショーを観に来る人のためにやるんだよ、お客さんが楽しんでくれるようなショーを作るんだ」
橋本「ショーを作る人間は人に幸せを与える職人だ。平和の象徴かもな。人が幸せになれば地球は青くなる」
勝利「プロデューサーはそのためにショーを作り続けていたんだ…」

なんとプロデューサーが「Show must go on」だったのは、地球を青くするためだった。展開がトンデモすぎる方に頭がいってしまいますが、実は『SHOCK』シリーズと比べてかなり顧客志向が強くなっております。「自分の夢を叶える」という考えではなく、「人々に幸せを与える」「世界を平和にする」ためにショーを作り続けるんですよ! すばらしいじゃないですか。そのショーが狂気から生まれていること、みんなが反対しても「俺1人でやってやる!」と言いだしてることなど考えると、若干不安が残りますが…。

(余談ですが、これまで振り返ると、必ず「やりたくないなら俺1人でやってやる」「俺1人になってもショーの幕を開け続ける!」「このショーを続けたいなら俺抜きでやれ=俺は1人で別のショーをやる」ってセリフがあるのは怖くないですか…?観客としてはみんなでショーをやってほしいな…ってね…)

 

すごく乱暴にくくると、『Endless SHOCK』も『Johnny's World』も構成がほぼ一緒です。

(1)リーダー(コウイチ、プロデューサー)「Show must go on!」
(2)メンバー「Show must go onってなんだよ!」
(3)メンバーの反発により大事故が起きて、リーダー死亡
(4)反発していたメンバーが「Show must go on」の意義を理解する
(5)やっぱリーダーはすごかった!「Show must go on」していこう!

(4)の「Show must go on」の意義が、それぞれ別視点から語られているわけですね。この2つの作品は同じ親からうまれた兄弟分みたいなもので、「Show must go on」という理念をコウイチという1人の人生にあわせてフォーカスしたのがEndless SHOCK、「客のため」という視点からさらに世界平和にまで広げたのがJohnny's 2020 worldだったのではないでしょうか。

まとめ

ここまで「Show must go on」という言葉の使われ方について、4作の舞台から流れを追ってきました。最初の『PLAYZONE '91 SHOCK』では迷いながら使われていたものが、2作目『SHOCK』では当たり前の言葉となり、『Endless SHOCK』『Johnny's World』ではその意義を与えられ、より強いテーマとなって作中で語られることとなりました。

もちろん、こういった舞台で語られることがそのまま製作者の考えであるとは言えませんが、ジャニーズに流れる理念のひとつとして注目してみると、ジャニーズ自体の見方が変わってくることがあるかもしれないですね。

もはや世界平和までいってしまった「Show must go on」を更に進化させた舞台がこの先現れるのだろうか…ぜひチェックしたいです。

*1:プレゾンSHOCKからしか知らないので、その前に使われているものがあったらすみません!

*2:goo辞書より

*3:おそらくジャニーさん管轄と思われる時期のHey! Say! JUMP、現在のSexy Zoneなど

*4:イギリスでは2月4日

*5:構成・脚本・演出はジャニー喜多川表記

*6:年により前田美波里森公美子

*7:2011年まではコウイチの独白シーン

*8:年によりツバサ、ヤラ、リョウ